「未来を創る! 臨床研究コーディネーター」井口亜橘さん

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井口亜橘さん
慶應義塾大学病院臨床研究コーディネーター
2006年 看護医療学部卒業

 

 

 

--現在、どんな仕事をされているのですか?

慶應義塾大学病院で臨床研究コーディネーターとして勤務しています。仕事の内容を端的に表現すると、「創薬や新規治療の開発に携わり、医療の未来を創ることに貢献できる仕事」といったところですが、実際は、未来を創るための支援部隊、言い換えれば縁の下の力持ちで、地味かつ根気のいる仕事に日々邁進しています。では、もう少し具体的な内容を説明します。

新しい薬や治療法を世の中に出すためには、その前段階として必ず、有効性や安全性の確認を行う臨床試験を実施することが必要ですが、これらの試験で収集されるデータは、科学的で、かつ客観性が担保されなければいけません。この目的を達成するため、臨床研究コーディネーターは医療機関において、試験全般のスケジュール管理や関係各部署との調整を横断的に行っています。また、試験に参加される患者さんに対し、試験内容をわかりやすく説明し、心配や不安があれば、それが解消されるように心理的なサポートを行うことも大切な仕事です。

このように、患者さんの意思を尊重し、権利を擁護する役割と、科学的なデータを的確に収集する役割と、2つの役割を併せ持つことがこの仕事の大きな特徴です。また、製薬企業の担当者や他の医療機関のスタッフなど、自分の勤務する病院以外の方とも相談・協力をしながら仕事を進めるため、相手の立場や考え方を理解し、業務を円滑に行う努力を怠らないことも必要不可欠です。多種多様な価値観を理解し、コミュニケ-ションを図り、自律して行動するといった、看護医療学部在学中に叩き込まれたことが、今の仕事にフル活用されていると言っても過言ではありません。

--看護医療学部を選ばれたきっかけは?

懐の深さ、その一言に尽きます。
私は他の大学を卒業後、社会人を経て、30代半ばで2学年に編入学しましたが、このように、医療以外の道を歩いてきた人間が紆余曲折した結果、看護師・保健師を志した時、広く門戸を開いて迎えてくれたのが慶應の看護医療学部でした。他にも幾つか編入学の制度がある大学がありましたが、慶應の場合、先生と生徒が一緒に学んでいく校風と、型にはまらない自由闊達な雰囲気があり、自ら考え行動できる職業人になりたいと切実に希望していた私にとっては、もってこいの学部でした。

しかし、正直に言うと最初から慶應を志望していたわけではありません。看護系の大学は国家資格取得という大きな目標が大前提にあり、厳しいカリキュラムが設定されているので、実は当初、実家から通える国公立の大学が第一志望でした。しかし前述したとおり、様々な背景を持つ学生を幅広く受け入れ、共に成長していこうとする懐の深さが看護医療学部にはあり、その点が新鮮で魅力的でした。どこの大学を受験するかについては結構悩みましたが、人生一度きりだから納得できる選択をしたいと「エイッ」と決意し、看護医療学部を選びました。

--どのような学生生活を送っていましたか?

私は大学生活が2回目で、しかも同級生は一回り下の年代になるため、学生生活に馴染めるのだろうかと入学前は心配の種が尽きませんでした。しかしこの心配は杞憂で、看護師の資格を取るという明確な目標があるためか、年齢は離れていても気持ちは通じる部分があり、在学中は楽しく学校に通いました。

必須授業や実習が盛りだくさんで、サークル活動に励む余裕はありませんでしたが、2期生には2学年編入学の同期が私も含めて合計3名おり、絶妙なチームワークでお互いの足りないところを補い合いながら勉学に励みました。編入生3人に対して先生1人という贅沢な環境での授業も組まれており、ここで濃密な時間を過ごしたことが私の財産になっています。

--看護医療学部へ入って良かったことは?

良き師に巡り会えたこと、良き友人に巡り会えたことです。
良き師との思い出のうち印象に残っているエピソードを1つ挙げると、それは「内分泌」の読み方に関する質疑応答です。

私はある授業で内分泌の読み方について、医療の分野では「ないぶんぴつ」か、それとも「ないぶんぴ」か、と先生に質問をしました。どちらの読み方もするので、質問に対して律儀に回答をしなくても済んだはずですが、当時学部長だった先生は、わざわざ内分泌学会に読み方の由来について問い合わせをしてくれたのです。先生のそのような行動に私はかなり驚き、感銘を受けました。そして結果的に、私も自分なりに調べなければと思い立ち、図書館にこもって関連の文献を探し始めました。

なーんだ、そんなエピソードかと思われるかもしれませんが、「常識をそのまま鵜呑みにせず、疑問を持ったら自ら確認する」という姿勢を改めて学ぶことができ、この姿勢は現在の仕事にも生きています。

--看護医療学部を志す後輩たちへメッセージをお願いします。

私は卒業後、看護師として病院勤務を経験したのち、現在の臨床研究コーディネーターとしての仕事に就いています。他の卒業生の活動状況を見てもわかるとおり、看護医療の職業分野は幅広く、進路も多様です。私は在学中に、仕事をしていく上で必須となる基礎的な技術・知識に加え、高い倫理観、業務に取組む姿勢など、人としての成長に大切な多くのことも学ぶことができました。
迷っている人は思い切って看護医療学部の門を叩いてみてください。

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