医療に国境はない。看護を通じて、アジアの架け橋になりたい。
晏磊さん

Profile
晏 磊(えん らい)

看護医療学部4年生
2014年入学
(2017年インタビュー)

--看護医療の道に進もうと決めたきっかけは?

5年前中国の病院で、幼い頃から私を母親代わりに育ててくれた祖母を看取ったときの体験から、日本の先進的な医療と思い遣りの心に溢れた看護を学びたいと決心しました。

慶應義塾大学看護医療学部を選んだのは、日本で最高の看護学部と知ったこと、そして、歴史のある大学で、看護だけでなく広い視野に立った勉強ができると考えたことからでした。

--力を入れて取り組んでいる学びや慶應らしさを感じることについて教えてください

看護師を目指した経緯から、慢性期、終末期看護に特に興味を持ち、プロジェクトにも参加しています。慶應らしいと感じることは、友だちがみんな勉強に対して前向きに取り組んでいて、それぞれ広い視野をもって、自分の将来を考えていることです。私自身いつも友だちから刺激を受けることで、頑張り続けることができました。

--これまでで特に心に残っている講義は?

3年生の終末期病態学の授業で、毎回毎回素晴らしい経験や活動をされているゲストスピーカーの方々のお話を伺い、直接その人の人生に接することができたことは何事にも代えがたい体験でした。ALS(筋萎縮性側索硬化症)、在宅ホスピス、サルトジェネシス、グリーフケア、すべての話が心に突き刺さり、熱いものが込み上げてきました。ヴィクトール・フランクルの友人だった永田勝太郎先生から教わった「人生は、あなたに絶望しない。」という言葉を、私は一生忘れません。

--課外活動など校舎以外での活動の思い出は

「足湯ひよこ隊」という東日本大震災の際発足したボランティア活動のサークルに参加していました。「クラブハウス・インターナショナル」という精神障がい者の社会復帰のためのNPOの国際会議で、言語ボランティアなどの活動も行いました。中国の復旦大学と慶應義塾大学の医療分野での交流プログラムで、スピーチをさせていただいたことも良い思い出です。

3年生秋の英国研修では、EACH(East Anglia's Children's Hosepises)という慈善団体が運営する子どものためのホスピス施設を訪問しました。キャサリン王妃が支援していることでも有名です。Tree House と呼ばれるこの施設は、終末期の子どもとその家族の心が少しでも癒されるようにとデザインされ、24時間体制で運営されています。そして、その活動は、地域のボランティアと寄付によって支えられていました。

この英国研修を通じて、サフォーク大学、ケンブリッジ大学、ナイチンゲール博物館、ロイヤル・オペラハウスなど、私は今まで見たこともない文化と価値観に接し、より広い視野をもって世界を見ることの大切さを知ることができました。


研修先のイプスウィッチ病院にて

--看護医療学部の魅力、強みはどのようなところにあると思いますか

ただ看護師を育てるのではなく、人間を育てることから始めるというところが看護医療学部の魅力だと思います。人間とはなにか、倫理とは何かを考えるなかで、私は自分が接する一人一人の価値観を尊重し、柔軟に対処することの重要性を学びました。

実習で体験したこと、考えたことはとても貴重だと思います。終末期看護実習、精神看護実習、在宅看護実習などを通じ、患者さんの人生に向き合うことで私自身が成長できたと思います。理論と臨床、講義と実習によって、学びを深めることができるということが看護医療学部の強みだと思います。

4年生の授業では、病院のマネジメントについても学びました。慶應義塾病院の組織・人事・経営情報まで開示して、医療の質の評価と様々な資源の効率的な利用について学生に考えさせる講義は、他の大学にはない質の高いものだと思います。

--将来はどうなっていたいですか?

「医療に国境はない。看護を通じて、アジアの架け橋になりたい。」これがピニング・セレモニー(*)のときの私の将来の夢です。慶應義塾大学で学んだ患者ための医療、人間性と柔軟性を持った看護によって、将来国際的な医療の場でも貢献したいと考えています。

*ピニング・セレモニー・・・看護医療学部では本格的な実習が始まる前(2年生の7月)に、自己の将来に向けて考える機会として、「ピニング・セレモニー」を開催しています。学生は将来の目標を宣言し、学部長からピンが手渡されます。

--看護医療学部を目指す学生へメッセージをお願いします

「外国で苦労して勉学した福澤諭吉先生がもし生きていたら、私を取ってくれると思います」面接でこう答えた私を受入れ、育ててくれたのは慶應義塾大学です。入学した時、看護医療学部100年の歴史の中で、純粋な外国人学生は初めてではないか、と言われました。私にとって外国語の日本語で専門分野の勉強をすることは、本当に大変なことでした。小泉信三先生の「練習ハ不可能ヲ可能ニス」という言葉が私の支えでした。そんな私を、先生方はいつも優しく導き励ましてくださり、先輩と友だちは、みんなで私を支え、いつでも、どんなことでも快く手伝ってくれました。「外国人だから助けるわけじゃないよ。あなたがレイちゃんだからだよ。」と友だちは言ってくれます。私が、大学の4年間で得た最も大切な宝物は、友情です。

門は叩かなければ、開きません。みなさんも慶應義塾大学の門を叩いてください。


支えてくださった先生と友だち